2017年9月22日、臨時国会が28日に召集されることが決まりました。報道では、9月28日の臨時国会冒頭の本会議で衆議院を解散し、10月22日投開票で総選挙が行われるとされています。
政治分野での学習でもおなじみの「衆議院の解散」ですが、実際にはどのような手続きを経て行われているのでしょうか?
目次
「衆議院解散」の根拠は?
衆議院の解散制度について定めているのはもちろん日本国憲法ですが、憲法には「解散」という語が、以下の通り全部で6回登場します。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
三 衆議院を解散すること。
第四十五条 衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
第五十四条 衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。
② 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
出典 日本国憲法
ここで、第四十五条は衆議院議員の任期について、第五十四条は特別国会の召集について定めている条文なので、実際にどのような場合に衆議院が解散されるかを定めている条文としては、第七条と第六十九条をあげることができます。
内閣不信任決議と「六十九条解散」
憲法第六十九条は、これまたおなじみの衆議院による「内閣不信任決議」に関する条文です。衆議院において内閣不信任決議が可決された場合には、条文にも記されている通り、内閣は以下の2つの選択肢からどちらかを選ぶことになります。
- 10日以内に衆議院を解散する。
- 内閣総辞職する。
このように、内閣不信任決議の可決を受けて内閣が衆議院の解散を選択することを、条文の番号をとって「六十九条解散」とよんでいます。
解散権は首相にあり?「七条解散」
憲法第六十九条に基づいて衆議院が解散されたのは4回ですが、一方で戦後の日本国憲法下で衆議院が任期満了を迎えたのは1976年のただ一度しかありません。ということは、残りの19回の総選挙は「六十九条解散」以外の根拠に基づいて行われたことになります。ここで登場するのが、憲法第七条に基づく「七条解散」です。
先ほど引用した第七条は、天皇の国事行為について定めた条文であり、衆議院の解散は国事行為の一つであるとされています。
この、「衆議院の解散=天皇の国事行為」という図式が、日本でこれほど頻繁に衆議院の解散が行われていることを解く鍵となります。
衆議院解散の瞬間を見てみよう!
以下の動画は、2014年11月21日に衆議院が解散されたことを報じたニュースの動画です。
衆議院解散の瞬間をこのように動画で見てみると、衆議院解散がどのように行われるかを見て取ることができます。
解散には「詔書」が必要
動画では、伊吹文明衆議院議長(当時)が、以下のように解散の詔書を読み上げています。
日本国憲法第七条により、衆議院を解散する。
御名御璽
平成二十六年十一月二十一日
内閣総理大臣 安倍晋三
ここには、まず衆議院解散の根拠が憲法第七条にあること(「七条解散」)が示されていますが、もうひとつ重要な要素が隠れています。
天皇の国事行為に必要なものは?
天皇の国事行為には、内閣の「助言と承認」が必要であることは有名ですね。
動画で議長によって読み上げられている詔書には、「内閣総理大臣 安倍晋三」というように、天皇の署名である「御名御璽」の後に内閣総理大臣が内閣の代表として副署をします。この内閣総理大臣の副署が、衆議院の解散という国事行為に対する「助言と承認」の役割を果たしているのです。
まとめ
さて、ここまで見てきたように、
- 衆議院解散の多くは「七条解散」によること
- 衆議院解散には内閣の「助言と承認」が必要であること
がわかりました。
このことから日本においては、内閣が自ら適切な時期に「助言と承認」を行って衆議院を解散することができる、という運用になっていると言えるでしょう。
一方で、衆議院解散については、「六十九条解散」以外を認めないとする見解や、「七条解散」を認めたとしても内閣総理大臣の解散権には一定の限界があるとする見解もあります。今回(予定)の衆議院解散についても、様々な立場から是非が論じられていますので、新聞やテレビのニュースに目を通してみましょう。