総選挙の争点!消費税はどう使われる?

経済

2017年9月25日、安倍晋三首相は衆議院解散の方針を記者会見で発表し、28日の衆議院本会議において解散詔書が読み上げられ、衆議院は解散されました。
この解散で国民に信を問う理由の一つとして首相があげたのが、消費税の使い道についてです。
日々買い物をする度に支払っている消費税ですが、消費税の使い道はどのように決められているのでしょうか。

消費税は使い道が決まっている!

租税法律主義をとっている日本では、税を課すためには根拠となる法律が必要になります。消費税の根拠となるのは消費税法という法律で、同法には以下のように消費税の使い道が定められています。

第一条 この法律は、消費税について、課税の対象、納税義務者、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
 消費税の収入については、地方交付税法 (昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。

出典 消費税法
この消費税法第一条二項に書かれているように、消費税の使い道は以下の3つに大別することができます。

  • 地方交付税の財源
  • 社会保障給付(年金・医療・介護保険)の財源
  • 少子化対策の財源
消費税のうち、地方交付税に充てられるのは税収の22.3%(地方交付税法第六条)であり、その残りの部分が社会保障などの財源に充てられています。

消費税の使い道はどう変わる?

さて、それでは今回の解散で問われる消費税の使い道の変化とは、どのようなものなのでしょうか。9月25日の首相会見では、以下のように述べられていました。

人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年10月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する。そうした道を追求してまいります。

出典 平成29年9月25日 安倍内閣総理大臣記者会見 | 平成29年 | 総理の演説・記者会見など | 記者会見 | 首相官邸ホームページ
ここで一つ気になるのは「4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています」という一言です。これはいったい、どういうことなのでしょうか。

社会保障の「充実」と「安定」

平成29年度の社会保障の充実・安定化について
出典 「平成29年度の社会保障の充実・安定化等について」(厚生労働省)
ここに引用した図版は、厚生労働省が発表している消費税収の使い道に関する資料です。
平成29年度は、消費税5%時代と比べて8.2兆円の増収となり、それが10%に引き上げられればさらに5兆円以上の増収となります。その5兆円以上の増収のうち、約4兆円が「後代への負担のつけ回しの軽減」という項目に充てられていることがわかります。
この「後代への負担のつけ回しの軽減」という名称はなかなかわかりにくいですが、「安定財源が確保できていない既存の社会保障費」と説明されています。これはつまり、これまで消費税では不足していたために借金や他の税収によってまかなっていた財源を、消費税の増収分で肩代わりすることで新たな借金を減らすために充てることを意味します。
そうした意味で、純粋に「社会保障の充実」のために使われるのは、10%に増税した場合の増収分のうち1兆円あまりにすぎない、ということになります。
「消費税の使い道の変更」は、増収分のほとんどが既存の費用の穴埋めに使われている現状を改め、より積極的な政策に使おうということであると言えるでしょう。

まとめ:具体的にどんな政策に使われる?

それでは、消費税の増税による増収分はどのような政策に使われるのでしょうか。
先に引用した首相会見の前の部分では、「人づくり革命」の内容として、「高等教育の無償化」「リカレント教育(学び直しの機会)の拡充」「幼児教育の無償化」「待機児童の解消」といった教育政策、「介護人材の確保」といった介護政策があげられています。
消費税の10%への増税は2019年に行われる予定となっています。増税は消費に大きな影響を与えることは間違いありませんが、社会保障を充実させていくためには財源が必要なことも否めません。税負担と社会保障の動向がどのように展開していくのか、しっかりと見守っていきたいところです。